去年からずっと懸かりきっていた新著『謹訳枕草子』が、一年間の悪戦苦闘の末に、やっと刊行の日を迎え、そろそろ書店にもならび、アマゾンなどのネット上でもご購入いただけるようになった。装訂は太田徹也さん。俗っ気のない、高雅でさわやかな装訂となった。
『枕草子』は、そもそもその本文の様態が伝本によって大きく異なっており、しかも、なおかつ意味不明のところも少なくないので、これを謹訳するのは、正直非常に骨の折れる仕事であった。けれども、そういう難儀の山道を踏み分けて、しみじみと解読訳述してみると、清少納言という女性の、正直で、率直で、しかも傷つきやすく、なおかつ曲がったことにはどこまでも反撃する、男尊女卑の平安貴族社会にあって、信念はどこまでも曲げずに、男たちに立ち向かう、その勇猛にしてナイーブな姿には、ほんとうに深い感銘を受ける。
現代の人たちにもぜひご一読ねがいたいと思うところである。
テキスト量からいうと、通常は上下二冊に分冊刊行してもよかったのだが、あえて一冊本として御覧のように厚い本として刊行した。その結果、価格はリーズナブルに抑えられたと思うので、どうかぜひ座右に備えて秋の夜長の友としていただきたい。
写真でもわかるように、私の謹訳シリーズはコデックス装という特殊な装訂を採用して、どのページでも、ノドからスカッと開くようになっている。それゆえ、机上あるいは書見台などに置いて、ゆるゆると味わい、あるいは朗読などしていただければ、著者としてなにより嬉しいことと思っている。
