11月22日、北九州の苅田町へ講演に行ってきた。苅田まちづ
くりカレッジというものの名誉学長に任じられている関係で、毎年
春と秋に開講記念講演をしにいくのが例になっている。今回は、
『風姿花伝に読む人生の智慧』という主題で、一時間半ほど話して
きた。講演そのものは午前中に終ってしまうので、午後は、北九州
から筑豊あたりの野を逍遥しながら、晩秋の風情を楽しんできた。
この写真はこの度遭遇した野の景色である。むろん名所旧跡でも何
でもない。いわば、どこにでもあるような無名の風景だが、この山
かげにひっそりと肩を寄せているような瓦屋根の集積に無限のなつ
かしさが宿る。美しい景色だなあ、と思う。こういう静かな野の景
色を、私はこよなく愛するのである。そして、かかる人知れぬ美景
は、日本中津々浦々、それこそ到るところに、かそけくもいきづい
てるのである。どうだろう、旅にでてみたいと思わないか。