蔵前に栄久堂という老舗の和菓子屋さんがある。去年、この栄久
堂さんの出している小冊子に拙稿を寄せたことがご縁となって、今
年の正月十日に、鏡開きの吉例というわけで、粟餅とお汁粉用のア
ンコを頂戴した。かねてから私はアンコには粟餅(粟飯)がベスト
マッチだと思っているので、これはほんとに嬉しかった。さっそ
く、このアンコでお汁粉をつくり、粟餅を焼いてこれに和し、今う
ちに戻ってきている息子夫婦ともども、一家して大いに舌鼓をうっ
た。アンコといい粟餅といい、日本の甘味の美味しさに、ほっぺた
が落ちる思いがした。それにしても、鏡開きという行事、じつは
すっかり忘れていたが、こういうご縁で、よい鏡開きをさせていた
だいたのは望外の喜びであった。