2011年10月19日水曜日

九州の秋


 先週末、福岡へ講演に行ってきた。九州市民大学という催しの講師として行って、古典文学のことを話した。1500人も収容できる大ホールが満席になっていたのはびっくりしたが、みな熱心に聞いてくださったことに感謝したい。
 その日は時間が遅くてもう帰京するすべもなかったので、そのまま博多にもう一泊し、翌日の日曜日に糸島半島から唐津あたりを逍遥して、秋らしい風景に際会し、また素敵に新鮮なイカの刺身を食べた。
 上の写真は、糸島志摩の鹿家(しかか)という在所の秋の田の風景で、いまどきはいくらか珍しくなりつつある、ハサ掛けした稲束が美しかった。コスモスが花盛りであった。
 下の写真は、唐津浜玉というところの「おさかな村」という市場の二階にある食堂で、「活き烏賊トッピング丼」というのを食べたので、撮影してみた。イカが、ピカピカと透き通っていて、実に新鮮。今の今まで活きていたイカでないと、こういうふうにはならぬ。ああ、おいしかった。

2011年10月18日火曜日

鳥取の海から

 最近、ネット上を検索していて、とても安全で美味しい魚を食べられそうなサイトに逢着し、さっそく取り寄せた。これは鳥取の河西信明さんという漁師さんが、弁慶丸という漁船を駆って近海で捕った魚を、朝獲れの新鮮なところで即座にトロ箱に詰めて冷蔵便で急送してくれるというものである。河西さんは、しばしばテレビなどでも取り上げられているらしいのだが、私は不覚にもいままで知らずにいた。根っからの漁師というわけでもなくて、大学を卒業して、サラリーマンを経験したあと、一念発起して漁師になったという変った経歴の主なのだが、それだけに魚の安全に対する信念は半端ではなくて、魚の安全を教えるセミナーなども開催しているらしい。
 さて、到着した魚は、ミミイカという小さなイカ、キンキ、ノドグロ、そしてカレイ、という顔ぶれであった。到着した昨日の夕方には、さっそくノドグロを塩焼きにして、またミミイカは、たたきと、オリーブ焼きと、ゲソの煮付けにして食べた。いずれも鮮度抜群で実においしかった。新鮮な魚は匂いが違う。生臭い感じがないのである。そして今日は、写真の大きなカレイをオーブンでローストして食べたが、これまたじっくりと脂が乗っていて、なんともいえず香ばしい焼き上がりであった。美味しい魚は、結局料理は単純な塩焼きとか刺身がもっとも美味しいのである。
 もともと魚が大好きで、およそ何の魚でも嫌いということがない。とりわけて、鯖とかカレイなどは、大好物。イカはまたイカマニアというも可なるほどのイカ好きで、かつて『烏賊の十徳』という烏賊賛美のエッセイを書いたことさえあるほどなのだ(拙著『是はうまい』所収、平凡社)。
 このカレイは、肉厚で、ほんとうに香ばしい匂いがあって、皮も肉もまたとなく美味であった。夫婦でつついて食べ終わって、あとに残った骨や頭で骨湯を作って啜ったが、これも結構なことであった。カレイのような底物は、ややもすると悪食のせいもあって匂いが悪いことがあるのだが、これはそうではなかった。日本海の清らかな海水で育ったカレイ、いかにもそんな感じがして、大いに舌鼓を打った。こうして安全な魚が食べられることを、天に感謝しなくてはなるまい。

2011年9月27日火曜日

嗚呼、秋!

 長く暑い夏がゆき、驚くような野分(のわき)が襲ってきて、日本中が水浸しになり、暴風に吹かれたが、さて、その後には、これぞ日本の秋、と詠(なが)めたいような、美しく快い日々がやってきた。
 これで原発から出る放射能がなかったら、どんなに気分は爽快だろうかと思うけれど、無責任な政府や官僚、金の亡者のような電力会社、そして志を喪った似非科学者たち、さらに、何も考えようとしない拝金老耄経営者たち、こんな善い秋の日に、それを無条件で楽しめなくしてしまったのは、誰か。この晴天のもと、のびのびと校庭の運動会を楽しめない子供たちに、ほんとうに申し訳ないと思わないか。
 それでも、秋の空は美しい。
 源氏物語を読んでいると、千年前も秋の空は美しかったことがわかる。
 ならば、千年後も、この美しい秋空を子々孫々に残さなくては、御先祖さまに申し訳がたたぬ。どうか、一日も早く、政治家たちが迷妄から覚めて、一致協力して原発をなくした立国をめざして欲しいと切実に思うのだ。
 首都高速を珍しく走った。そうしたら、こんな絵のような雲が、空を彩っていた。まるでルネ・マグリットの絵のような、不思議な空の景色。思わず、運転しながらパチリと一枚撮った。

2011年9月13日火曜日

料理の仕事

 きのうは、久しぶりにまた料理の仕事をした。今回は、雑誌クロワッサンの依頼で、簡単で美味しい料理ということで、秋らしい素材ということを意識して作った。献立は、
  煎り豚肉と枝豆とパイナップルの洋風ばら寿司
  セロリと茹で鶏と梨のサラダ
  茄子の味噌粕煮
  ジャガイモと豆乳とキノコのポタージュ
 まあ、こう書くといろいろ大変なようだが、料理そのものはいずれも簡単で、雑誌取材のための写真撮影などがなければ、全部で三十分もあればできる。
 どれもとても美味しくできてよかった。
 この料理は、来月発売くらいのクロワッサンにレセピを含めて詳しく出るので、乞う御期待!

2011年9月11日日曜日

稲童(いなどう)の月見


 きょうは北九州の行橋というところへ行って、講演をして戻ってきた。
 この行橋市は、大分県との境に近いところであるが、その稲童というところに、地元の画家原田脩の作品を展示顕彰するために、地元の有志がみなボランティアで力をあわせて作ったという美術館がある。
 ごらんのような、水田の豊かなところで、折しも豊年満作の稲穂が垂れ、そして中秋の名月を明後日に控えた、佳日であった。
 私は日本文学のなかで、日本人はどのように月を眺めてきたか、という話をした。よい海風が吹いて、心地の良い夕べであった。

2011年9月4日日曜日

謹訳源氏全巻朗読

 この十月三日から、東京エフエム系の衛星ラジオ局ミュージックバードから、わが『謹訳源氏物語』を、始めから終りまで、ぜんぶ私自身の朗読で読み切ってしまおうという、壮大な連続朗読番組がオンエアになる。ただいま、そのための録音を進めているところだが、これが言うは易く行うは難いのだ。一回の収録で四時間、ほとんど読みどおしに読んでいるので、さすがに声帯の耐久力が限界に近い。
 それでも、秋になってキンモクセイが咲く頃には、毎年私はアレルギーで声が出なくなるので、今のうちにできるだけ録り溜めをしておかなくてはならない。
 七巻以後を書き進めるのも、それはもう呆れるほど大変な仕事量なので、そのかたわら朗読をすすめるというのは、ほんとうに大変だと、つくづく思いながら朗読収録を進めているところである。
 この番組は、くわしくは「最新情報」のコーナーにデータを掲示するので、それをごらんいただきたい。ただし、この局はふつうのFM受信機だけでは聞くことがきず、専用のデコーダが必要になる。もっともローカルFM局にも配信するので、場所によってはそちらのほうでお聞き頂けると思う。ただし、ネット配信もするというし、また後日電子ブックのような形でダウンロード販売するという計画もある。当面は、ローカルFMまたはネット上でお聞き頂けるかと思うので、また詳しくはこのHPの告知をご覧いただきたい。

2011年8月29日月曜日

諏訪の秋

 昨日28日、名古屋の能楽堂で、衣斐正宜師の『松風』で、解説に名古屋まで出向いた。松風は、秋の風情横溢する、実に美しい名曲で、能も結構に堪能させていただいたが、例によって名古屋までは車で往復した。
 27日の夕刻に諏訪湖SAで一服した折、すぐ脇の斜面が一面の薄であった。
 信州の高原の秋は早く、東京はまだ残暑だが、諏訪はもう秋一色となっていた。
 うれしくなって写真を撮ったのがこれである。もっとも、帰路は、夏休み最後の週末とあって、上り線は大渋滞で、五時に名古屋を出たが、結局帰宅したのは午前二時になっていた。