2009年12月26日土曜日

夕顔の恋

ただいま、源氏物語全訳を執筆中であることは、たびたびお知らせした通りであるが、その入門編とでもいうような意味もあって、『夕顔の恋』という本を、つい最近刊行した。版元は朝日出版社。この本は、源氏のなかでも、もっとも男好きのするタイプと思われる夕顔という女を巡って、それがどのように源氏のなかに描かれ、どんな意味があるのだろうか、ということを「夕顔ファン」の一人として、おもしろく分かりやすく書いたものである。この表紙の人は、夕顔とは何の関係もない新進のモデルさんだが、こういう美人フォトを装訂にも、また本文中にも挿入して、古典物としては珍しい雰囲気を醸し出している。おそらく、古典が苦手な人にも読みやすいと思うので、とくに若いかたがた、あるいは定年後のオジサンがた、ぜひぜひ読んでみてください。なかには、源氏物語の本文、そしてこの本専用の林望現代語訳、さらに、読解エッセイとが収められている。ただし、この本に用いた現代語訳は、現在進行中の『謹訳源氏物語』のそれとは全然ちがう。念のため。林 望