2016年5月26日木曜日

謹訳平家物語第三巻

ちょっとお知らせするのが遅くなりまして恐縮ながら、現在刊行中の『謹訳平家物語』の第三巻がリリースとなりました。
 この第三巻は、いよいよ平家が滅亡にむかって、坂道を転げ落ちていく「滅びの章」ともいうべく、全体に悲壮感ただよう名場面が目白押しです。
 都落ちの哀話、義仲の沙汰、義経の出陣、一の谷の合戦、そのほか、各地で転戦しながら、しだいに衰微していく平家のありさまが、じつにすばらしい表現で書かれています。私などは訳しながら落涙したくらいの名場面が、いくつもありました。ぜひぜひ、皆さま書店で手に取ってご覧下さい。そしてお求めになって、折々に朗読してみてください。あるいは朗読会などをなさっている方は、ぜひこの一冊を朗読テキストとしてお取り上げください。日本古典のなかでも出色の面白さを、ぜひぜひ感じ取っていただきたいのです。またこの作品は、『源氏物語』などとはことなり、高校生くらいでも充分に理解し味わうことのできるものなので、とくに若いかたがたにご一読をお願いします。
 なお本書については、さきごろ毎日新聞に著者インタビューが掲載されたので、下記のサイトでご参照ください。
 http://mainichi.jp/articles/20160517/dde/018/040/036000c
 また、『赤旗』日曜版5月29日の紙面にも、大きなインタビュー記事が掲載されますので、ご覧いただけますと幸いです。

2016年5月22日日曜日

あんこまパン

さて、金沢のコンサートを無事終えて、次は日田市鶴河内にある、井上邸滴翠園ホールでの「井上邸壱世紀記念コンサート」である。今回は、懐かしい叙情歌の二重唱が中心で、お相方は、テノールの勝又晃君。伴奏は、いつものとおり五味こずえ君である。
 そこで、その最後のリハを20日におこなった。まあまあ、声の調子もよろしく、勝又君とのデュエット「デュオ・アミーチ」はもうずいぶん経験を積んだことでもあり、たのしく合わせることができた。独唱曲もたのしく歌い通す事ができたのは、一つの収穫であった。
 リハに先立って、私の手料理で「まかない」を供したが、今回は、サンドウィッチでの軽食とした。手前の石皿には、ポテトとキューカンバーの、真ん中の印版の皿にはスクランブルエッグ、ツナとフライドオニオンの、それぞれサンドウィッチがのせてある。キューカンバーは加賀の太胡瓜を用いてイギリス風に仕立てた。そうしていま勝又君と私が手にしているのが、本家本元『あんこまパン』である。考えてみると、歌では何度も歌ったけれど、彼らにこの「あんこまパン」を御馳走するのは、これが最初であった。幸いに、二人とも、おいしいおいしいと言って平らげてくださったのは、まことにありがたいことである。この「あんこまパン」の作りかたについては、拙著CDブック『あんこまパン』をご参照願いたい。

2016年5月21日土曜日

金沢コンサート

去る5月18日、金沢アートホールでの、林ー北山組(デュオ・ドットラーレ)のコンサート『タンゴの時代』を無事終了した。この写真は、当日のリハーサルでの一コマで、男二人の間に立って歌っているのはピアニストの中田佳珠さん。アンコールの『夏は来ぬ』を歌うに際して、この際、ソプラノとして歌い手に加わっていただいたのである。中田さんは金沢大学付属高校の音楽の先生でもあるので、さすがに堂々たる美声で大いに花を添えてくださった。ピアニストは五味こずえさん、バンドネオンは力石ひとみさん。
タンゴの時代、というテーマだからというので、今回は、敢てタキシードでなくて、もうすこしラテン的なものをめざし、ご覧のような格好で歌った。われながら、すこ〜〜しキザであるが、まあ、タンゴだからこのくらいキザでもよろしかろうと思っているところである。しかるに、肝心の歌は、なかなか思うようにもいかなかったのが、切歯扼腕であったが、いずれ次回は捲土重来を期したいと、そう思っているところである。
          
すべてのプログラムが終って、フォワイエで記念撮影。左から中田佳珠さん、力石ひとみさん、私、北山ドクター、そして五味こずえさん。おかげさまで、場内は超満員という嬉しい悲鳴となった。
 さあ、いよいよ次は紀尾井町サロンでの東京公演である。こんどこそ、失敗しないようにがんばって歌いたいとひそかに期するところがある。

2016年5月9日月曜日

リハーサル

だんだんと金沢コンサートの日も近づき、いよいよ今日がひとまず仕上げのリハーサルということになった。
 きょうは東京の拙宅に、北山ドクター、バンドネオンの力石さん、そしてピアノの五味君と集合して、一通りの曲目を試みた。私自身は、まだまだ仕上がるところまで到達せず、これから一汗かいて努力しなくてはなるまいと思っているところである。
 が、北山ドクターは、もう本番さながらの万全の仕上がりに近く、堂々たる歌声にはうならされた。ぜひ、私もこういうふうに歌いたいものだと、密かに期するところがある。
 リハが終ったあとは、私の手料理にて夕食をともにした。
 きょうのメニューは、まず林特製ハヤシライス、とまあ洒落のようだが、もともとこのハヤシライスというのは、丸善の早矢仕有的(はやし・ゆうてき)が考案したものとされているので、林望が作ってハヤシライスというのは、別に洒落でもないのである。このハヤシライスは二日がかりで念入りに作ったのでかなり手間ひまがかかったが、それなりに美味しくできて、皆さんに喜んでいただいた。それからコールスロー、これはイギリス定番のキャベツのサラダである。手前の鉢に入っているのは、筑前煮で根菜を主とした煮物ゆえ、三つ揃えて栄養的に万全を期したというところである。
 さあ、これからまた練習、練習。

2016年5月6日金曜日

地には菜の花

世の中はゴールデン・ウイークだというので、さぞかし道が混むだろうと思い、毎年この時期は外に出ないで過ごしてきたのだが、今年は、ふと思い立って、三連休の中日五月四日に信州信濃大町の山荘へやってきた。すると、この日は中央高速はまったくガラガラに空いていて、三時間半ほどで到着することができた。こんなことなら、毎年来ようかなあと思っているところである。
 今回は、北山ドクターも、御母堂を伴って来村されたのだが、折しも新緑が滴るようで、その美しさは御母堂にも大変喜んでいただけたそうである。まことにめでたい。
 しかし、私の方は、どういうわけかひどい寝違え状態で、まるで首が回らず、その痛みでろくに夜も眠れないありさま。とはいえ、喧騒を離れて、新緑滴るごとき信州の天地に遊んでまことに心の保養になった。
 きょうは、北山ドクターと同道して、白馬のほうまで蕎麦など食べに行った。快晴の空のもと、芽吹きの山には、まだ桜も残り、地には一面の菜の花、そして田には満々と水が張られて、いよいよ田植えの時期となった。
 信州のもっとも美しい佇まいが、そこにあった。一年に何度とない好日である。

2016年4月18日月曜日

松阪行

先週の土曜日に、松阪の本居宣長記念館の主催で、鈴屋学会が開催され、そのまあ、一種の基調講演を頼まれたので、宣長の愛して止まなかった『源氏物語』について、いささかの講釈をしてきた。
 松阪には、初めて足を踏み入れたのだが、さすがに江戸時代には紀州藩の治めるところであったという歴史を思わせる、どこか丈高い風格のある町である。今回は、あいにくに奥歯が痛み出すというハプニングに襲われ、本来は、講演終了後もう一泊して松阪のそちこちを探索してくるつもりだったのだが、それも今回は諦めて、ただちに帰途についた。それゆえ、せっかくの松阪をろくに見ることもできなかったのは、はなはだ心残りと言わねばならぬ。いずれまた再訪の機会もあるであろうということを期待して、今回はまっすぐに帰ってきたのであった。
 ただ、同記念館の館長吉田悦之先生のご案内で、同館の誇る豊富な宣長自筆本の展示を逐一拝見し、極めて深い感銘を受けた。宣長にはいままでやや縁遠い感じであったけれど、知れば知るほど、私自身と共通する思念の存在を感じ(恐れ多い言いかたではあるけれど)なんだか他人のような気がしないのであった。
 また隣接地に移築されている宣長の旧居にも館長じきじきのご案内を頂き、特別に宣長の書斎にも参入することを許されたのはまことに望外の幸いであった。
 清潔質素、そして大きく開かれた窓の外には緑が滴るようで、もともとあった場所では山や桜が窓外に望見された由である。この床の間の一行書きは宣長にとっての心の師であった賀茂真淵の霊位を表したものである(この字は宣長の自筆)。
 『源氏物語玉の小櫛』を読むと、宣長が源氏をどういうふうに読み味わっていたかが解るが、それは私も、自分自身の考えを書いたかと思うくらい同感するところである。まあ、そんなことも少しばかりお話しながら、講演そのものは物語のなかで紫上がどのように描かれているかという、その創作意図を探るという方向でお話をし、例によって謹訳源氏の朗読なども交えてお聞き頂いた。
 松阪はよいところ、ぜひまたゆっくりと訪ねたいと思っている。

2016年4月6日水曜日

タンゴの時代

(詳細なデータは、この画像をクリックすると大きく表示されますので、拡大表示の画面でご覧下さい)⇒東京の紀尾井町サロン公演のほうはチケット完売になりました。金沢アートホール公演のほうはまだ多少残席がございますので、揮ってお申し込みください。
いよいよ、私どものコンサートのチラシが出来てきました。
五月の金沢コンサートと、六月の東京コンサートは、同じプログラムなので、この一枚で共用することにした次第です。
 金沢市アートホールのほうは、300席ほどのキャパシティがあるので、まだ余裕がありますが、紀尾井町サロンホールのほうは、80席しかない小サロンなので、すぐに完売満席となることが予想されます(去年の十二月のコンサートのチケットはあっという間に売り切れとなってしまいました)。
 ですので、もしご来聴希望のかたは、いずれもお急ぎ、上記連絡先までチケットのお申し込みをいただけますよう、お願い申し上げます。
 コンサートのプログラムが一部変更になりました。

  第一部
  こいつぁだめさ(ガルデル作曲『Por Una Cabeza』の林望訳詩版)
  勁き心で(カナロの『Corazon de Oro』の林望訳詩版)*
  あなたの診断(インストルメンタル)
  いまひとたび(高木東六作曲、旧題藤浦洸作詩『古い港』林望新詩版)
  遠い春(高木東六作曲 野上彰作詩)*
  悲唱(高木東六作曲 門田ゆたか作詩)*
  忘られぬ夢(高木東六 鳥羽俊三作詩)
  (休憩)
 第二部
  君帰る日は(ガルデル作曲『El dia qe me Quieras』の林望訳詩版)
  黒猫のタンゴ(パゴーモ作曲 おおのみずほ訳詩)*
  オブリヴィオン(ピアソラ作曲、インストルメンタル)
  リベルタンゴ(ピアソラ作曲、インストルメンタル)
  霧子のタンゴ(吉田正作詩作曲)
  だんご三兄弟(内野真澄・堀江由朗作曲、佐藤雅彦・内野真澄作詩)*
  など・・・(*印は二重唱)

 目下、私どもは信濃大町の山荘に一堂に会して、リハーサルを重ねております。どうぞみなさま揮ってお運びくださいますよう、心よりお願い申し上げます。