熊本に講演にでかけた。
今回は、『能を面白く見る方法』という演題で、御当地の新作能
『清正』への興味を盛り上げるための前座的講演であったけれど、
おかげさまで二百人ほどの人々が集まってくださった。反応のよい
きもちのよい講演会となった。終ってから、ケンブリッジにおける
旧知の英文学者Y先生(熊本在住)と四半世紀振りの再会を果た
し、市内の繁華街にある金寿司という店で御馳走になった。東京仕
込みのなかなか上乗の寿司だったけれど、そのとき、店主が「これ
はちょっと珍しいものですが」といって出してくれたのが、この写
真のアヤシイ品物であった。これが、コリコリして、ねっとりし
て、礒の香りがして、しかしいままで明らかに食べたことのないも
のだった。降参して教えてもらったところ、これはイソギンチャク
だとのこと。イソギンチャクも種類によってこのように美味しく食
べられるのだと、初めて知った。いくつになっても、新しい知見と
いうものはあり得るものである。