2008年8月9日土曜日
枕草子
しばらく前から、『小説NON』(祥伝社)という小説雑誌に、
「リンボウ先生の枕草子うふふレクチャー」という連載を書いてい
る。もともとは近世文学と書誌学文献学の専攻で、平安時代文学に
ついては門外漢だったのだが、その後、近世の小説などはどうもつ
まらない、ということを強く感じるようになり、それと同時に『源
氏物語』や『枕草子』に強く惹かれるようになった。やはり、文学
としては、こちらのほうが一流の高みにあるということは動かな
い。それで、以前も、東横学園短大で、近世文学を教えることにウ
ンザリして、「近世文学演習」という授業の枠のなかで、北村季吟
の『源氏物語湖月抄』を講読したことがあった。近世の学者がどう
源氏と向きあったか、ということを建前として、要するに『源氏物
語』のほうがはるかに面白いということを学生にも教えたくなった
のだ。この写真は、家蔵の『枕草子春曙抄』江戸前期の刊本である
が、これまた碩学北村季吟の注釈書である。季吟は、主要な古典文
学のあれこれに、こういう頭注傍注をつけた注釈書を著したが、そ
れは今日でも古典研究には必須の大業績である。昔の俳人というも
のは、いまの大学教授を十人あわせたくらいの素晴らしい学識を身
に付けていたのである。それにしても、『枕草子』という作品の面
白さ。なんだか、世間では源氏千年紀なんてことばかりが持て囃さ
れているなかで、源氏と同時代の『枕草子』も、日々勉強するほど
に、その面白さと凄さが身にしみてくる。それゆえ、ぜひこの『小
説NON』の連載をお読み頂きたいと切望するのである。